オデオンとベルティエ、二つの拠点を調べる

パリのオデオン劇場が気候への適応を考えるとき、対象にしたのは歴史ある劇場一棟だけではありません。文化省の連載第1回には、パリ6区のオデオンと17区のアトリエ・ベルティエという二拠点が登場します。調査では建物に加え、観客の受け入れや技術管理など、日々の運営に欠かせない業務も扱っています。

使ったのはCarbone 4が開発したOCARAという評価手法です。文化省の記事では、二拠点が気候に起因する危険にどの程度影響を受けるかを評価し、重要な運営プロセスを特定したと説明されています。建物とそこで働く人、観客を一緒に調べる点が、この手法の特徴です。

六つの軸を、一晩の公演に当てはめる

オデオンが提案した計画には六つの軸があります。表の右列に、文化省の記事が紹介する対策案をまとめました。

文化省が紹介するオデオンの適応計画
軸原典に挙がる対策
運営の方針事業継続計画、公共調達、人事文書に気候の課題を入れる
職員の労働勤務時間や設備の調整、予防、可能な業務のテレワーク
観客の受け入れ時間帯、収容人数、設備を調整する
制作と上演巡回公演、資源の共同利用、代替公演を検討する
建物緑化、夏の快適性、熱環境の改修
新しい使い方日中に涼しさを提供し、人々を迎える場所にする

例えば開演を遅くする対策を考えてみます。観客が暑い時間帯を避けられても、舞台を準備する職員の勤務がそのままなら、職員の負担は残ります。終演が遅くなると、観客や出演者の帰りの交通も確認したくなります。この例は、六つの軸を公演の準備に当てはめて考えたものです。

代替公演の準備にも同じことが言えます。公演の内容を変える担当だけでなく、変更を知らせる担当や、必要な機材を用意する担当が関わります。観客、職員、制作、交通の条件を一緒に考えると、施設管理者だけで決められることがどこまでかを整理しやすくなります。

「50℃」という問いから、次の公演を考える

原典の題名は「50度で演じる」です。導入では、夏にパリが50℃に達するときにどう演じるかと問いかけています。ただし記事に、公演を中止する温度、各室の実測値、何年に50℃になるかという予測の条件は載っていません。題名の数字を、そのまま自施設の中止基準に使うことはできません。

自分の施設で六つの軸を使うなら、まず次の暑い日の公演を一つ選び、観客を迎えるまでに必要な仕事を書き出す方法があります。誰がどこで働くか、変更を誰が決めるか、どの段階で利用者へ知らせるか。具体的な判断基準は施設の状態や関係者の方針を確かめて定めます。

今回確認したのは文化省による紹介記事です。オデオンの元報告書の全ての評価表や、対策の実施状況は確認できていません。六つの軸から分かるのは、劇場の適応を人・運営・建物の組合せで考えていることです。建物と収蔵品に焦点を移すと、次のルーヴルの例では別の選択が見えてきます。