一つの遺跡と、複数の海岸線
ノルマンディーの地図化を、一つの図から見てみます。文化省の連載第3回には、ル・ロゼルのコミューンにあるル・プーの中期旧石器時代の遺跡を対象とする図が載っています。図の題名は、沿岸リスクと文化財、海岸線の変化と歴史的建造物です。
図は航空写真の上に色の異なる範囲を重ねています。凡例では、紫が建物や遺跡などの不動産の歴史的記念物、黒い線が現在の海岸線です。その下には海岸線の変化の区域が続き、侵食と堆積、2050年と2120年、最大と平均などの区分があります。色が重なっている理由を、凡例で確かめることが最初の作業です。
DRAC Normandieの図には背景画像や他機関のデータも含まれ、個別の転載条件を確認できていません。図は下のリンクから文化省の原典で見られます。
原典の沿岸図を開いて読む ↗凡例から、読む順序を決める
画像を開いたら、まず中央付近の紫の範囲と、海側を通る黒い線を探してください。次に、凡例の2050年と2120年という年の違いを見ます。同じ年でも、最大と平均の区分が異なります。海沿いの全ての色を一つの「危険区域」として読むと、期間と評価の違いが失われます。
- 紫の文化財の範囲と、黒い現在の海岸線を確認する。
- 海岸線の変化の区分で、対象年と最大・平均を読み分ける。
- 文化財のどの側に変化の範囲が近づくかを、写真と照らし合わせる。
- 数値を使う場合は、元のデータと条件の説明を追加で確認する。
この図だけから、遺跡が失われる年や、対策に必要な金額を決めることはできません。図の情報からは、同じ文化財について複数の時期や区分を比較する必要があると分かります。画面の小さな凡例が読みにくければ、原画像を別タブで開き、ブラウザの拡大表示を使ってください。
文化財の台帳と沿岸リスクを重ねる試行事業
文化省によると、ノルマンディーDRACは2025年にGISの試行事業を始めました。海岸線の後退や変化、海水による浸水の情報と、文化財の台帳を照合する取組みです。地域に既にある環境データに、DRACが持つデータベースを加えています。保存、保護、修復の優先順位を考える材料にすることが目的です。
ただし、今回の図で示されているのは海岸線の変化です。試行事業が海水による浸水も扱うことを理由に、この一枚を浸水深の図として読むことはできません。また、原典は全国の文化財情報システムを開発中と説明しています。この図を、全国共通の完成済みサービスの画面として紹介することもできません。
日本の地図で、同じ問いを試す
原典には、自然災害や技術的リスクを調べる公開地図Géorisquesも紹介されています。この記事で扱ったのは文化省の静止図です。Géorisquesの画面操作は今回確認できていません。
日本で同じ問いを考える場合も、文化財の名称、点と範囲の違い、危険情報の種類、対象時期を順に確かめられます。次の平城宮跡のコラムでは、実際に公開画面で検索し、同じ場所の自然地形を地理院地図で表示します。文化財の位置とリスク情報をどう重ねるかは、私たちのWeb GISでも大切にしている視点です。